著作権法改正を解説
著作権法改正
いよいよ施行となったこの改正法ですが、日が経つにつれ具体例が続々と示されてきました。
今回は補足として時効について追記します。(10/1)
著作権侵害については賠償請求権・差止め請求権・不当利得返還請求権が存在します。
そして刑法及び民法それぞれに各時効が規定されておりますので、著作権侵害を提訴する際は
これらの法律をよく把握しておく必要があります。
また、加害者側となった場合は、侵害をしたという事実があるとすれば、20年後に提訴される
という事も法律理論上考えられます。
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民法での時効
- 損害賠償請求権の行使と時効
民法 第724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を 知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したと きも、同様とする。
簡単に言うと被害者側が知った時から3年の間に行使しないか、加害者側が不法行為を行った時から20年経
過の何れかで時効が発生するという事ですね。
- 不正利得返還請求権の行使と時効
同法 第167条 1.債権は、十年間行使しないときは、消滅する。 2.債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。
このうち著作物に対する所有権を主張する事になりますから、第2項の20年間行使しない場合に時効が
発生する事になります。反面19年11か月後に事実を知ったのならば、そこから訴える事が可能という事です。
しかし、数十年経過してしまえば、その事実を立証するのは非常に難しい事ですし、損害がどの程度であった
かを証明するのも同様に、非常に困難であると思われます。
立証責任はこの件で言えば、大半が原告側にあるわけですから、その事実・証拠を出来る限り集めなければ
なりません。
- 差止め請求
これは不法行為が行われる恐れがある場合に、未然にそれを防ぐ為の請求権であるから、時効は存在しません。
刑法での時効
親告罪と非親告罪によって、それぞれ時効成立までの期間が異なります。
親告罪に当たるのは、著作権、出版権、著作隣接権、著作者人格権、実演家人格権の侵害行為です。
非親告罪に当たるのは、著作者を偽り著作者ではない者が主張する事や、出所を明示しなかった場合や
著作者や実演家死後に人格権を侵害した場合となります。
親告罪については”刑訴法”第235条が適用されます。
親告罪の告訴は、犯人を知つた日から六箇月を経過したときは、これをすることができない。
同法235条 参照 https://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html
非親告罪については”刑訴法”250条及び251条が適用されます。
同法250条及び251条参照 https://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html
刑訴法250条4号に定めるところによると公訴時効は7年で、
同法250条5号に定めるところによると公訴時効は5年となります。
しかし、その事件の状況によってはその他の法律が適用される場合もありますので、
これについては何度も明示しておりますが、参考程度にお読みください。
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著作権法改正に関する法律が施行される10月迄、残すところ2週間余りとなりました。
そこでおさらいの意味を含めて、この記事に更に追記していきたいと思います。
世間をリアルタイムで騒がせているこの著作権法の一部改正に関する法律について解説しよう。
この解説内容に法律用語・専門用語を出来る限り除いたものとなり、原文については文化庁より公開されている
「著作権法の一部を改正する法律の概要」及び「著作権法の一部を改正する法律」の原文をご覧いただきたい。
なぜ改正する必要があるのか
この著作権法は昭和45年5月6日に制定されました。制定されて実に42年が経過し近年世界的に
インターネットの利用が拡大し、各国は法改正を迫られ改正を繰り返してきました。
ところが日本ではこのインターネットを始めとしたネットワーク内に於ける著作権の保護やそれに付随
する機器に対する法律改正には大きく遅れをとっており、近年になってやっとグレーゾーンが明確化
されるようになりました。しかし、対応は常に後手に廻りグレーゾーンは依然存在しつづけました。
この為著作者及び利用者にとってあらゆる不利益を被ってきたのが現状です。
これを打開する為に、権利者や利用者又は双方に関わる者の保護を目的として更に明確化する事に
なりました。
過去著作権法がインターネット内コンテンツに於いて対応困難な状況を作り上げてきた事で、
違法アップロード及び違法ダウンロードやいわゆるグレーゾーンに当たる範囲が実質実行・利用可能
なままであったし、エンドユーザーはその違法性を認識していない状態で違法とされ、刑事及び民事
において不利益を被ることもありました。
これは法律によって明確化されていない為に、法解釈によるところ判例が全てであった為です。
そこで、有識者は著作権法をインターネットやデジタル化に対応させようと考えた結果がこの改正法です。
ここで誤解してはならないのは、政府案は有識者との協議のうえ改正されるものでありますが、
民自修正案は有識者を交えないで、議論されないまま法改正が決定されてしまった事は知っておい
て頂きたいところです。
要するに前者は知ってる者が議論し法改正を行ったが、後者は大して知らない者が議論や協議を行わ
ないまま可決されたという事です。
何がどう改正されるのか
・海賊版と認識したうえで販売等の広告行為を行使した場合、権利を侵害したとする。
・Youtubeなどの動画や音楽アップロードサイトに、著作権に関わる法律に違反する動画や音楽を
違法と知っていながらダウンロードやアップロードを行い、結果的に複製を行った者は懲役2年
以下、200万円以下の罰金が科される事になりました。
この他の条項についてもこういった懲役・罰金又はその両方が科されるものも新たに明記されました。
>>ニコ動を見るだけで違法!? ストリーミングダウンロードという手法を利用してキャッシュに一時的にダウンロードして 閲覧する場合は、今回の改正法では除外規定が設けられていますが、ダウンロード複製した 場合は違法のようです。単純に見るだけなら合法、ダウンロード複製した場合は違法。 しかし、親告罪である事をお忘れなく。
・リッピングソフトを利用し、アクセス規制が行われているBD/DVD/CD等のうちコピープロテクト
(CCCD)を利用していないCDの私的利用を目的とした複製は合法です。
しかし、今後DVD等のアクセス制御がなされている物は、私的利用の範囲内であっても規制対象です。
・インターネットを利用する上でYahooやGoogleなどの検索サイトを利用するのは当然の流れですが、
これまで日本では検索結果が著作権法違反に値する可能性が指摘されてきました。
従って各企業は日本国内にサーバーを設ける事を敬遠してきたのが現状です。
これをこの改正法により除外する事が明記されました。
要するに文書・動画・画像等検索結果に必要な物は違反にならないと言う事です。
これにより各検索サイトは日本国内にサーバーを設ける事が可能になります。
・過去に制作されたテレビ映像や画像等で、著作権利者や実演者が不明な物は、パブリックドメインと
判断されたり、文化庁長官の裁定を待って利用する事が可能でした。
しかし、これはかなり曖昧なもので、不明瞭なものは長官の結果によるところで手続き完了まで
長期間に及ぶものでした。
これを更に明確化し、裁定申請を待たずして供託金を供託すれば利用する事が出来、更に裁定範囲を
実演者の所在不明の場合であってもこの制度を利用する事が出来ます。
・国会図書館における所蔵資料の電子化が広い範囲で可能となりました。
・インターネット販売等で美術品等の画像掲載が可能となりました。
例えばインターネットショップやオークション等で、その商品の画像が必要な場合、これらを掲載
すると、著作権法違反の恐れがありました。これを規制の対象とならないとしました。
よって、これらの方法により商品画像を掲載する事は基本的に違法にはなりません。
・ウェブ制作に関わる言語・音声・映像等の研究や解析を行う際に今までは著作物の複製とされて
きましたが、これを除外し研究・解析に於いて複製が出来るようになりました。
しかし、データベースの解析は規制されます。
例えば新聞社等が提供する有料データベースを解析する事は出来ません。
・インターネットを利用する上で、Webページ閲覧等の際処理速度向上や利用の円滑化を目的に
基本的にはPCに一時的に著作物が複製される構造(キャッシュ)となっており、これはグレーゾーン
となっていました。しかし、これを規制対象から除外する事となりました。
・障害者の情報利用の機会の確保が長年求められてきました。
例えば今までテレビ番組を視覚的に情報を得られない方々は、聴覚的や点字等を利用し、情報を得て
きました。ところが、これには情報を改製又は複製を行わなければ出来ず暗黙の元、著作権法違反が
言われてきました。しかし、その他の障害者にとっても、健常者と同様の情報を得るためには仕方が
ない事でありながら、罰せられる状況となっていた為、この程改正される事になりました。
>>テレビ番組を録画してiPad等のモバイルツールで見ると違法になるのか?
この改正法では私的利用目的で複製したものをインターネットを通じてiPad等のモバイルツールに送信し複製した
場合は違法と謳っています。要するにクラウド等はインターネット上(自動公衆送信) を利用して送信す
るものであるから、現行直接的に私的目的での複製は問題ないが、クラウドシステムを利用して複製する
事は違法となる可能性が高いです。これらの文言により放送関係者及び視聴者共に違法行為が蔓延す
る事は間違いないでしょう。今までは許されていた事であったし、そのシステムは世界的には一般的な
方法と位置付けられ、更に発展している分野である為、日本だけがこの時代に逆行した法律という事に
なります。また、この法律を作った政治家にも違法者が多く出てくるのは避けようが無い事実となるでしょう。
今後の影響は?
無駄なトラブルに巻き込まれる事は減少傾向になると思われます。
違法ダウンロード及びアップロードの範囲がある程度定義される事となり、合法性コンテンツと
違法性コンテンツを利用者及び作者が知る機会を得る事が出来ます。
マジコン等を利用した機器及びプログラムの所持及び利用者は、現状低年齢の利用者も多く、
これらを第三者に対して譲渡・貸与・譲渡等目的の製造・輸入・供与・送信又は送信可能な状態・
インターネット上での販売の為の広告が禁止され、譲渡・貸与をしばしば行っているであろう子供達
を罰しなくてはならない恐れがあります。
これらの改正法により刑事罰が新たに適用されるものや、有識者から見て新たに発生したグレー
ゾーンが残る条項が含まれており、著作権に詳しい弁護士側から判断しても、反対とする方も
おられるようです。
最後にご理解いただきたいのは、法律の解釈はどちらとも取れるものがあります。曖昧要素ですね。
この改正法にも当然そういったものが含まれます。それを違法かどうか判断するのは、司法の判例
に頼る所であるから、この記事に記載された事が正しいという訳ではありません。
合法として扱われるべきものが違法になる事やその逆も司法判断を待つ事も出てきます。
よってこれらの記事についての内容は、目安やアドバイス程度の範囲内で収めて頂きたい。
また当方は弁護士ではなく、私的調査により得られた情報を元に研究した結果を記事にしており、
これらの法解釈の違い等により発生した損害や迷惑等の保障等は一切致しません。
詳細については利用規約をお読みください。
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ITmedia:違法ダウンロード刑事罰化・著作権法改正案が可決・成立 10月1日施行へ
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1206/20/news090.html
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